[digital]ライティング&レンダリング 第3版書評
ボーンデジタルから「[digital]ライティング&レンダリング 第3版」を献本いただきましたので、SIG-TA世話人の麓一博さんに書評いただきました。
最初にこの本の内容を知らない人に対して、一番重要なことからお伝えします。「(デジタル)ライティング&レンダリング」というタイトルから、3DCGの中でも一部分にすぎない、ライトに関する事柄だけを扱った本ではないか、と思われるかもしれません。しかし、それはまったく違います。
もちろん3DCGの技術の進歩により、ライティングの重要性が高まってきているのは、言うまでもありません。本書においてもライティングにはじまり、3DCGの中でライティングにまつわる事柄、たとえば質感表現、反射などマテリアルに関する事柄や、レンダパスの合成方法、色温度に関する事柄、そしてライトに密接に関係するシャドウについてなど、3DCGの重要な要素のほとんどを本書で学ぶことができます。
前半ではライティング初心者が学ぶために必要なライトの種類と、各々から得られる表現、さらには基本的なライトによる表現と、グローバルイルミネーションとの違いなどが、逐一丁寧に解説されています。
アンビエントオクルージョンやデプスマップシャドウなど、リアルタイムレンダリングでよく活用される技法についても、計算式やプログラムではなく、図解説明で解りやすく仕組みが解説されています。さらに仕組みの解説から、どのように使用するかまでを一つの流れとして解説しているので、とても理解しやすいと感じました。
例えば「ライトの減衰「逆2乗」は現実のライトの減衰に使用する」「『「逆3乗』は空気のもやによる減衰に用いるため、水中や霧を表現するのに向いている」「デプスマップシャドウの影に用いる画像解像度がどれだけメモリに依存しているか」といった解説もされています。
これらを知ることで、皆さんがゲームで表現したいことは何か。そして、それに必要な技法はどれかを、正確に想像することができるのではないでしょうか?
現在ではライトを使った表現技法は、ゲームのリアルタイムレンダリングでも多く活用されており、ライティングの調節で画面クオリティに差が出るようになってきました。
そしてライティングに描かせないのが、マテリアル表現や反射についてです。
後半では、シェーダのアルゴリズムとテクスチャマップを用いた質感調整方法について解説されており、プログラマブルシェーダで表現されるゲームの質感表現にも応用できる知識が得られます。
リニアワークフローの導入方法や、パス合成に効果的である点など、リアルタイムレンダリングの中では新しめのトピックも取り扱われています。
以上の点から、ゲームクリエイターの中でもライティングに関わる人はもちろん、環境アーティストやキャラクターモデラーも自分の作ったモデルが最終的にどういった画像になるのかを想像しやすくなります。自分でライティング演出を考えながらモデリングできるようになると、結果的に画面クオリティがあがることも想像しやすくなるでしょう。そのためアーティスト職であれば、一読することをお勧めします。
また、描画プログラマーもアーティストがどういう絵を求めているのか、本書を読むことで想定できる様になるので、読んでおくと良いんじゃないかなと思います。
※この本はプログラムに関しては一切触れられていないので、描画プログラムに落とし込むためには、また別の本での知識が必要になります。
SIG-TA世話人 麓一博
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