IGDA日本NPO推進委員会 - 記事一覧
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2013-12-4 10:03 |
インディゲーム開発者とコミュニティ
12月21日にアメリカのIGDAからゲストを迎えて、「日米ゲーム『新』時代」というセミナーを開催します。その背景となった出来事や、ここ最近のインディゲームを巡る動向についてちょっと感じることがあったので、ブログを書いてみます。
さて、この一年を振り返ってみると、今年のゲーム業界はインディゲーム開発者の年でした。3月のBitSummitを皮切りに、東京ゲームショウのインディゲームコーナー、SIG-Indie10、東京ロケテゲームショウ、デジゲー博と、同人&インディゲームのイベントが例年になく盛り上がったように思います。クラウドファウンディングとインディゲームの結び付きも大きなトピックでした。国内では「モンケン」、海外では「Mighty No.9」が資金調達に成功し、新しい可能性を示しました。でもって、インディゲーム開発者であれば、おそらく自分たちが作ったゲームを世界中で配信することを夢見ているのではないかと思います。できるだけ多くの人にゲームを遊んで貰うのはクリエイターの性みたいなものですし、世界中に配信できる中で、あえて国内だけでリクープを狙う必然性が乏しいからです(タイトルによるとは思いますが)。ただ、多くの人が漠然と海外版を出してそれっきり、みたいな感じではないでしょうか。 これは書籍の世界でも同じように感じているのですが、なんとなく「コミュニティベースドパブリッシング」という考え方が、世の中に広まっているような気がします。コミュニティの中で講演をしたり、ブログを書くなどして、高い影響力を持っている人またはグループが書籍を執筆し、それを周りのコミュニティ参加者が口コミで周囲に伝播させていき、売上に貢献するというモデルです。それによって得た利益を執筆者は再びコミュニティに還元し、次のループが始まる・・・。まるで同人誌やミニコミ誌みたいですが、このコミュニティがインターネットやSNSを介して薄く広く拡散している点が、おもしろい点ではないでしょうか。それになにより、今時ふつうの書籍より何倍もの冊数を、同人誌が売り上げていたりしますしね・・・。 閑話休題。たとえば今ならクラウドファウンディングで資金を募って書籍を作成する、なんてこともできそうです。でも実際に資金を調達するには、ある程度のネームバリューがあって、コミュニティを形成していることが重要であることは、なんとなく気がついている人も多いのではないかと思います。そして一方的にコミュニティから簒奪するのではなく、著者もまたコミュニティの構成員の一人として、そこに還元していく姿勢がなければ、コミュニティ自身が枯れてしまうでしょう。 つまり何が言いたいかというと、もしインディゲームを作って世界で配信したいなら、ゲームを作るのとを同じくらい、国際的なユーザーないし開発者コミュニティの育成が重要な時代になっている、ということです。たとえばSteamでグリーンライトを通過するためには、世界中のユーザーの後押しが必要不可欠です。そのためには「ゲームができたから、みんな応援してね」ではなく、日頃から開発者コミュニティの一員として、知人のゲームのグリーンライト通過を応援するなどの姿勢が求められるでしょう。いわば「情けは人の為ならず」というわけです。別に海外でなくても、コミケで委託販売を手伝うとか、国内でも同じですよね。 自分はゲーム開発者ではありませんが、やはりIGDAでいろいろ活動をして、GDCに毎年行っているうちに、だんだんと開発者コミュニティを通した知り合いが増えてきました。IGDAでは毎年GDCに加えて、カジュアルコネクトアメリカにあわせてIGDAサミットというカンファレンスを開催し、知見を共有し合います。ぶっちゃけ、そんなに大きなカンファレンスではなくて、100名くらいのメンバーが集まるくらいなんですが、規模が小さいだけに交流も密接です。自分も今年はじめて参加したのですが、ただ参加するだけではつまらないので、「なぜIGDA日本はゲーム開発者ではなく、ジャーナリストが運営しているのか」と題して、一席ぶってきました。英語での講演でしたが、事前に用意した英文を読み上げるだけでしたし、時間も20分くらいでしたし、なにより聴衆も5-6人でしたので、そんなに大変では亡かったです。 そこでお会いしたのがエド・マグニンさんというベテランゲーム開発者です。アップル2時代からずーっとプログラマとしてゲームを作っている人で、現在は独立されて携帯ゲーム機とスマホに特化したゲーム開発を行っています。IGDAでは財務をあずかるIGDAファンデーションというグループの世話人をされており、知日派で日本に住んだ経験もあるとのことで、日本語を勉強されています。そのマグニンさんがクリスマスにあわせて日本に来日するので、何かIGDA日本で講演したいという依頼があり、今回のセミナーを企画する運びとなりました。 しかもマグニンさん、自分が英語で講演したのに影響を受けたらしく、自分も日本語で講演するといっています。正直言ってどの程度のレベルか、うーんという感じなのですが、このバイタリティと挑戦心がやはりアメリカのインディゲーム開発者だと思うのですね。失敗を恐れず、常に前向きに行動する。その背景にはマグニンさんの、日本のゲーム開発者とネットワークを作りたい、IGDA日本を通して、開発者コミュニティを広げたいという想いがあります。それが回り回って自分の得にもなるのは、言うまでもありません。このあたり、我々も見習いたいところではないかと思います。 GDCやカジュアルコネクトを取材して思うのは、彼らの「前へ、前へ」というバイタリティです。クリスマス直前で、しかも三連休の初日での開催ではありますが、ぜひ一人でも多くの方に参加いただければ有り難いなあと思います。マグニンさんを迎え撃つ日本のメンバーも、2Dファンタジスタの渡辺雅央さんに、SIG-Glocalization世話人でKAKEHASHI GAMESの矢澤竜太さんと、これまたバイタリティあふれる方々ですので、きっと元気を分けてもらえると思います。 |
2013-12-3 0:53 |
オンラインセミナーについて
IGDA日本では定期的にオンラインのストリーミングセミナーを開催しています。2012年は東京大学の藤本先生と一緒に、不定期にシリアスゲームのカンファレンス参加報告会などを行っていましたが、今年に入って新たに「オンラインセミナー」と題してスケールアップしました。
それに伴い配信方法もUstreamとニコニコ生放送の二本立てとなり、配信機材も自分の「なんちゃって配信」から、クロマキー合成をもちいた本格的な配信にバージョンアップ。配信はIGDA日本理事でグルーブシンクの松井さんに手伝っていただいています。松井さんは業務での配信も受けおわれているため、クオリティが雲泥の差です。 ニコニコ動画で配信されるようになって、単純に視聴者数も増えました。Ustreamだけの時代でも30人から40人くらいの累計視聴者数がありましたが、それに単純にニコニコ動画の配信数が加算された感じです。 2013年9月11日に配信された「IGDA日本オンラインセミナー#03 アメリカ&シンガポール 世界に広がるシリアスゲームの今」では、ニコニコ生放送で累計80人、Ustreamで累計30人と、過去最大の視聴をいただきました。録画をアップしておけば、あとからでもちょこちょこ見て貰えますし、時には「ネットで見たんですが...」と問い合わせをいただくことも。いやー、ありがたいですね。これだけでも配信する価値があるというものです。 IGDA日本ではリアルのセミナーを開催していて、参加者同士の交流やコミュニティ作りにはオフラインが向いているとは思います。ただし地方の方は参加が難しいですし、準備やら当日の運営やらで、結構大変なのも事実。またテーマによらず、どんどんいろんな人に喋りたいことを喋って貰いたいと、ずっと思っていました。そのためオンラインセミナーという形式が、かなり向いているのではないかと思います。あと、やっぱり配信していて楽しいですしね。自分がもともと雑誌の編集をしていたからかもしれませんが、放送とか配信とか、なにかワクワクするものがあります。 というわけで12月9日(月)にはオンラインセミナー#06「今さら聞けないセキュリティ入門」を開催します。講師は東京ロケテゲームショウ・ワーキンググループ世話人で、SIG-Indie副世話人もつとめる、Maniac Houseの大澤範之さん。以前CEDECでも「初心者のためのセキュリティ/プライバシー講座」を講演されました。「セキュリティの話を、できるだけゆるく話す」ことをモットーに講演されるとのことなので、セキュリティに乗り遅れてしまった(僕みたいな)方、ぜひご覧ください(もちろん録画もします)。事前に素朴な質問も受けつけていますので、ぜひハッシュタグ#igdajをつけてTwitterでツイートしてください。講演中のタイムラインでの投稿も歓迎です。ただし、こちらはUstreamのみとなります。 また、年明けにはオンラインセミナー#07も予定していますので、こちらもお楽しみに。こちらは再びUstreamとニコニコ生放送の二本立てとなり、強力な講師が登場する予定です。IGDA日本には、こんなふうにいろんなタレントがそろっていて、どんどん知見を共有していきますので、今後ともご期待ください。 IGDA日本オンラインセミナー配信アドレス Ustream ニコニコ生放送 |
2013-2-10 3:04 |
本業優先の法則
会社の社長室などに行くと、よく社是社訓が張ってありますよね。あれは経営者が常々、迷ったときに見て会社の方針を再確認するために必要なんだと聞いたことがあります。
IGDA日本はこのミッションに即して、さまざまな活動を行っているのですが、そこで一つ重要な行動規範がありました。どこにも書かれていないので、改めて紹介します。それが「本業優先の法則」です。
世の中にはさまざまなNPO法人があり、中には常勤雇用者を抱えている団体もあります(IGDA本体も数名の常勤雇用者がいます)。しかしIGDA日本については、今のところ給与などはお支払いしていません。そのため常に「本業優先でお願いします」と説明しています。当たり前ですよね。
でも、時々これが逆転しちゃうことがあるんです。一番まずいのは「IGDA日本の運営に本腰が入り過ぎて、業務に支障が出た/体を壊した」みたいな状況が発生すること。そうなると周囲との摩擦が発生しますし、新しく運営スタッフに手を挙げてくれる人はいなくなりますし、活動が先細りになってしまいます。IGDA日本にとって最大のリスク要因といえるでしょう。
ただ、世の中ってどんどん移り変わっていきます。就職した、昇進した、結婚した、子どもが生まれた、地方転勤になった、転職した・・・。人ひとりをとりまく環境も、どんどん変わっていきます。そのため「昔のようにIGDA日本の活動に力を入れることが、できなくなった」ということが必ず発生します。それが当たり前だと思います。
そこで、そういう人には最大限の謝辞でもって、こころよく活動をお休みいただけるようにしています。役員やSIGの世話人であれば、どんどん交替していただければと思います。だってボランティアなんだから! 自由意志でやっているから、楽しいんであって、義務感でやるのは辛いだけですよね。
ちなみに、適任者がいなければ、その人が担当していた分野は、新しく意欲のある方が手を挙げていただけるまで、休止となります。ずーっと休止が続くと、なくなります。そうやって組織の新陳代謝を計っていく仕組みになっています。これはIGDA日本全体としても同じで、役員の任期は2年となっています。再任回数に限りはありませんが、逆に「辞めたい」という人を引き留めることはできない仕組みです。
逆に新しく何かやりたい、という人に対しては、よく「手と口の両方を動かしてください」とお願いするようにしています。手と口の両方を動かす人は、周りから信頼がどんどん集まります。手と口を共に動かさない人は、だんだんフェードアウトしていきます。そりゃそうですよね。
では片方だけの人はどうか? 手だけ動かす人は、雑務でも粛々とこなしていただけるので、大変ありがたい存在です。逆に口だけ動かす人は・・・次第に信頼を失っていきます。これがボランティア団体のおもしろいところです。同じようなことは、オープンソースコミュニティでも聞かれます。実際にコードを書いた人が偉い、というわけですね。
まとめるとIGDA日本は、どんどん中の人が入れ替わっていくことが前提となっている組織です。そのため、できるだけ日々の活動に際して、ドキュメント化を進めるようにしています。そして誰がどう入れ替わっても、うまく引き継げるようにしたいと思っています。だって「本業優先」ですからね!
というわけでIGDA日本で何かやってみたい、運営に参加してみたい、手伝ってみたい、講演してみたい、という方がいたら、お気軽にお声がけください。「本業優先」で楽しくやっていきましょう!
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2013-1-4 8:00 |
法人登記が終わりました
気がついたら前回のエントリから5ヶ月もほったらかしになっていて、駄目なブログの見本になっていました、はい。というわけで既にご案内させていただいた通り、昨年12月にすべての手続きを終えて、ぶじにIGDA日本はNPO法人として再スタートを切ることが出来ました。いやー、疲れた、(待っている間が)長かった。何はともあれ「法人化」が「やるやる詐欺」にならなくて良かったです。
ただ法人というのは、なっただけでは意味がなくて、継続していかなくちゃいけない。でもって法人だからできる事業を、粛々と進めなくちゃいけない。だって法人になることは手段であって、目的ではありませんからね。じゃないと「とりあえず社長になりたいから起業する」みたいな話になっちゃう。それと共に、いろんな内規を決めていかなくちゃいけません。 ま、それはさておき、今回はとりあえず(気が早いですが)NPO法人化を進めていく上で、目に見えて現れるようになった変化や、良かったことについて書いてみます。 まず第一に「社会的信用を得た」ことですね。いろんなNPO法人が異口同音に告げています。具体的にはセミナー会場などを借りやすくなりました。最近ではIT業界を中心にいろんな勉強会が開催されるようになりましたが、それでも「NPO法人(認証中)です」というと、やっぱり信頼度が違うと感じます。特に東京では場所代が大きくて、無料または安価で利用できるセミナー会場の有無が、会の活動においてホントにホントに大きいんですよ。 第二に活動内容のドキュメント化が進んだ。これまではよく言えば瞬発力と集中力がある、悪く言えばやりっぱなしで、知見の集積や再利用がおざなりでした。これがNPO法人化を進めるうえで、お金の流れをきちんと管理する必要が出てきた。そのため予算表などをちゃんと作って、蓄積するようになりました。その結果、過去の事例が参照できるようになって、いわゆるPDCAサイクルが回せるようになってきたんですね。 そして第三に組織化が進んで、いろんな活動を定期的にできるようになった。なんといっても今年は夏に福島GameJam、秋に東京ロケテゲームショウを続けて実施できました。東京ロケテゲームショウなんて、一回やってあんまり大変だったから、みんな燃え尽きちゃって、ずっと放置されていたくらいですからね(あまりに大変そうだったから、僕も積極的にかかわってませんでした)。これがどちらも開催されて、しかもみんな余裕がある! いやー、もうびっくりです。 こんなふうに、物事を決めるためのルールを明確にして、みんなで手分けして実施できるようにした成果が、早くも出ました。 でもって、何か一つ火がつくと、どんどん周りが進んでいって、世の中ががらっと変わってしまう・・・そんなことがあるんだなあと、最近あらためて感じています。その恒例がグローバルゲームジャムです。なんと今年は国内で14会場がエントリーして、米国・ブラジルに次ぐ世界三番目の会場数を誇るまでになりました。グローバルゲームジャムって、わずか数年前は影も形もありませんでしたよね。日本に紹介された当時も、「何それ?」と懐疑的な見方で見られることの方が多かった。こうしたイベントの成長にIGDA日本が少なからず寄与できたことはホントに誇りに感じます。 IGDA日本も法人化を契機に、どんどんいろんな人に加わってもらって、ますます会を発展させていければいいなあと思っています。まずは1月19日に新年会がありますし、その後もSIG-Audioセミナナー、グローバルゲームジャム、SIG-BGワークショップとセミナーやイベントが目白押しですので、ぜひ一度足を運んでみてください。よろしくお願い申し上げます。 |
2012-7-1 1:47 |
SusanがCEDEC AWARDSにノミネートされました
すでにご存じの方も多いかと思いますが、CEDEC AWARDSのプログラミング・開発環境部門でIGDA Education SIG(教育専門部会)のSusan Goldさんがノミネートを受けました。「ゲーム開発者の裾野をグローバルかつボーダーレスに広げる活動」というのが、その理由です。解説文には「Global Game Jam(GGJ)」についての説明があり、GGJ立ち上げに伴う彼女の貢献を賞賛するという意味合いであることがわかります。
*Susanさんの略歴はこちら。 GGJは2009年にスタートしましたが、当時は日本でほとんど知られていませんでした。それが、わずか数年で急速に成長し、ゲームに関する数々の世界記録を収録した「ギネス世界記録 ゲーマー編」の2013年度版に、世界最大のゲームジャムとして記載されるまでになりました。日本でも東京工科大学を筆頭に各地で参加会場が増え、福島ゲームジャムの開催にも大きな影響を及ぼしています。 というわけで、今回のノミネートはIGDAの一員として、日本支部でも非常に誇りに感じると共に、改めて御礼を申しあげる次第です。ぜひ当日は多くの開発者の皆様のご賛同をいただき、部門賞に輝いて欲しいと強く祈願しています。 ただ、GGJほどのプロジェクトになると、とても1人では開催がおぼつきません。そこでGGJの成り立ちについてご紹介しながら、他のメンバーの功績についても、ここで紹介しておきたいと思います。詳細についてはIGDA日本アカデミック・ブログでも解説されていますので、そちらもご参照ください。 今回のノミネートでもわかるとおり、GGJはIGDAの教育専門部会が立ち上げたイベントです。そのためコンテスト形式ではなく、人材育成面が強く打ち出された内容になっています。この時の中心メンバーとなったのがSusan Gold、Gorm Lai、そしてIan Schreiber氏の3名です。この功績で3名は2009年度のIGDA MVPボランティアに選出されています。 しかし、GGJの母体となったイベントがあります。それが2006年からデンマークで始まったノルディック・ゲーム・ジャム(NGJ)です。この運営ノウハウを抽出し、IGDAの組織力を生かして、世界規模に拡大させたイベントがGGJというわけです。ただ、当然ながらNGJの立ち上げにSusanは関係していません。また前述の通り、Susan1人でGGJを立ち上げたわけでもありません。 また教育専門部会も一朝一夕に生まれたわけではありません。もともとIGDAにはEducation Committee(教育委員会)が存在し、彼らが中心になってGDCやシーグラフで教育サミットを開催していました。その成果として2002年にIGDAカリキュラムフレームワークが策定され、2003年に最初の改定が行われました。しかし、当時はまだSusanはSIGの中心メンバーではありませんでした。 その後、教育委員会は2006年に改めて教育専門部会となり、2008年に第3回目のカリキュラムフレームワーク改定を行います。この時の部会世話人がSusanで、この功績により彼女はMVPボランティアに選出されました(本フレームワークはウェブ上で日本語訳を閲覧できます)。 つまりSusanは2006年に発足した教育専門部会で世話人を務め、2008年にカリキュラムフレームワークの改定にかかわりました。その上で2009年にGGJ立ち上げの中心メンバーとして活躍し、2度にわたってMVPを受賞しました。この2点において、彼女はCEDEC AWARDSのノミネートに、非常にふさわしい人物だと言えます。 繰り返しになりますが、カリキュラムフレームワークを発展させ、さらに世界各地のゲーム教育拠点のネットワークを活用してGGJを世界各地に展開したスーザンの功績は、非常に大きいと言えるでしょう。 一方でGGJは彼女1人の力で生まれたわけではなく、教育専門部会もまた、多くの参加者のボランティア精神によって支えられてきました。GGJも今ではIGDA本体主催のもと、GGJ委員会が運営を担当しており、教育専門部会とは切り離されています。さらに新しくLearning, Education and Games SIG(学び・教育・ゲーム専門部会)が発足し、この分野での広がりを見せています。 こうした背景事情を知った上で、彼女のノミネートについて接すると、より幅広い捉え方が出来るのではないでしょうか? *なお、この文章の意図は彼女の功績を何らおとしめるものではないことを、重ねて補足しておきます。 |
2012-6-28 8:11 |
NPO設立総会を開催しました
すでに公式リリースでお伝えしたとおり、IGDA日本では6月23日(土)にNPO設立総会を開催いたしました。これまで本ブログでもお伝えしてきたとおり、昨年末から粛々と設立準備を進めて参りまして、ようやく最初の第一歩が踏み出せたという感じです。
これまで毎月1回のリアルミーティングと、毎週のスカイプミーティングに参加いただいてきた皆様、大変ありがとうございました。またSIGのメンバーやセミナー活動などを支えていただいているボランティアの皆様、会場をお貸し頂くなど常日頃から活動にご協力をいただいている企業の皆様にも、改めて心から御礼を申しあげます。 さて、今後のスケジュールですが、現在は定款や設立趣意書といった申請書類を司法書士の方にご確認いただくなど、申請の最終段階に入っています。おそらく来週中には東京都の方に書類を提出し、認証申請ができるのではないかと思います。その後、申請された旨が東京都公報に掲載されると共に、定款類や収支予算書などが2ヶ月間、縦覧可能になります。んでもって何事もなければ4ヶ月後に認証(または不認証)となります。 ところが、これだけでは話が終わらない! 無事に認証を受けたら、次は法務局に行って登記の手続きを行わなければなりません。その後、登記事項証明書を添付した設立登記完了届出書などを東京都に提出して、無事NPO法人となります。そのため早くても年内、実質的には来年1月から法人として再スタートとなるのではないでしょうか? ちなみに認証までに4ヶ月かかると説明しましたが、これが不認証となると、また再審査に4ヶ月・・・。とほほって感じです。 んでもって、この審査というのがホントにアレでして・・・。たとえば「住所を住民票の通りに書け」という規定があるんですが、これがホントに住民票の通りに書くと通らない!(可能性がある)。または都庁で通っても法務局でハネられる(可能性がある)。それも「3丁目」を「三丁目」にするとか、「○丁目○番地×号」の「号」を削除するとか・・・。人生40歳を超えてなお、まだまだ勉強する毎日です、はいw というわけで最近はホントに書類を書いたり書類を書いたり書類を書いたり・・・でもって当然のようにケアレスミスが発生して、書類を修正して・・・という事務作業の毎日です。こんなにWordやExelを使ったのは人生で初めてです、いやほんと。とりあえず都庁への申請手続きが終われば、良くも悪くも一段落つくので(でも差し戻しで4ヶ月余分に喰らうのは勘弁して欲しい!)、もうちょっとの辛抱です。 あ、そういえば6月末は決算なんでした(IGDA日本は6月決算)。法人化のためには経理処理をしっかりしなければいけませんよね。うーむ、もうしばらくExcelと戦う日々が続きそうですw |
2012-4-3 6:01 |
GDC個別報告会と東京の優位性
ちょっと間が空いてしまいました。IGDA日本代表の小野です。
3月31日に開催したGDC報告会では、200名近い方々にご参加いただき、大変ありがとうございました。ディスカッションでも軽く触れましたが、近年のGDCは周辺領域を巻き込みながら拡大を続けており、もはや全容を掴むのは不可能になっています。 会場では自分を含む9名の講演者の皆様に体験談をご報告いただきましたが、それでもまだまだ全容が掴めたとは言えないでしょう。皆さん、話したりないことが多いのではないかと思います。そこで今年は分野別に3回の個別報告会を開催することになりました。 まず4月15日に予定されているのが、GDC学生報告会です。これは学生の立場でGDCに飛び込んだ参加者が、学生の視点で体験記を語るというものです。当初はラウンドテーブル形式の開催も考えていたのですが、4月からゲーム開発者会社に就職した高砂君の発案で、講演会形式で行うことになりました。どれくらい参加者が集まるか不明だったのですが、すでに40名の入場者を集めて満員御礼となりました。また会場をご提供いただいたCRI・ミドルウェア様にも改めて御礼を申しあげます。 翌週の4月22日には、グローカリぜーション部会からGDCローカリゼーションサミット報告会をお届けします。ご存じの通り今日のゲームビジネスにおいて、海外展開は大作ゲームからアプリやソーシャルゲームに致るまで、重要なトピックの一つとなっています。当日はゲーム業界で長くローカリゼーションに携わってきたベテラン世話人が半日かけてガッツリと海外の先進事例をご報告します。まだチケットに余裕がありますので、ぜひご参加くださいませ。こちらはサイバーコネクトツー東京スタジオ様で開催します。たいへんありがとうございました。 そして月末にはオーディオ専門の報告会も予定しています。GDCオーディオ部門のセッション参加者を中心に、専門性の高い報告会ができるかと思います。CEDECなどでもオーディオ関係のセッションは少ないだけに、是非ご期待いただければと思います。 さて、このように個別の報告会がフットワーク軽く開けるというのは、一つには講師として手をあげていただける開発者の皆様の存在があります。情報や知見を企業を越えて共有しよういう試みに快くご賛同いただき、大変感謝しております。 そしてもう一つは東京という場所の利便性です。世界にはシリコンバレーやモントリオールなど、ゲーム開発会社が集まるクラスターが幾つかありますが、東京ほど開発会社が集結し、かつその国を代表するような開発クラスターは、存在しないと言って良いでしょう。だからこそ、飲み会でもセミナーでも誰かが手を上げれば、すぐに集まることができて、大きな波及効果がみこめます。 逆にデメリットとして、世界有数の地価と人件費の高さがあります。今の世の中、単純に開発スタジオを運営するだけなら、 東京にいる意味はほとんどないと言って良いでしょう。だからこそ、山手線周辺地域に大量のゲーム開発者がまとまって存在する特性をフルに生かして、生産性の高いゲーム作りを行う必要がある。つまり企業の枠を越えて、すぐに集まれる利便性を生かさなければ、きわめて損だという意味です。 IGDA日本ではこうした地域の優位性をさらに生かすべく、今後もさまざまな活動を進めていきます。ご期待ください。 |
2012-2-20 14:08 |
ハピネス社会
2012年2月18日に秋葉原で開催されたenchant.jsと9leapsのユーザーイベント「Leapfest」で行った「ハピネス社会」という15分間のスピーチとスライドです。igda日本の基本的なビジョンについても触れているので共有します。
皆さんこんにちは。igda日本の小野憲史です。
今日は9leapの投稿ユーザーが多いと聞いて、勝手に学生を対象者に講演内容を考えてきました。社会人の方は学生に戻ったつもりで聞いてください。
さて、9leapへのゲームプログラム投稿は面白かったですか? 僕らのチームもグローバルゲームジャムで「ワナゲー」というゲームを投稿しました。非常に面白かったです。ゲームを作るのも面白かったけど、9leapに投稿したのも面白かった。
でも、なぜ無償の行為が面白く感じたのでしょうか? 社会人になると、しばしば「なぜ仕事がつまらないのか」「どうしたら楽しくなるのか」「働く意味とは何なのか」といった思いにとらわれることがあります。9leapに参加して幸福感(ハピネス)が得られた理由はなんでしょうか?
つらつら考えると、大きく3つの理由が思い当たります。▽自由意思である▽無償の行為である▽仲間やライバルがいるーー。つまり、これが「社会的な遊び」だからですね。
実はこれは偶然ではなくて、これらを意図してenchant.jsと9leapは設計されているように感じます。▽習得しやすい言語▽ゲームという題材▽ランキングやメダルなど、ゲーミフィケーション的な仕組みーーなどです。特に三番目の存在は大きくて、単純に器だけを作って、さあどうぞというわけではないんですね。
つまり9leapの参加者はゲームを作ってハピネスを生み出していますが、9leapを生み出したUEIは投稿ゲームが集まるサイトを運営することで、ハピネスを生み出していると言えます。
皆さんは将来、さまざまな職業に就くでしょう。ゲーム開発者なら、ゲームを作ってハピネスを生み出してください。ウェブ制作者なら、ウェブサービスを作ってハピネスを生み出してください。そして、それ以外の業界に進む方でも、ビジネスや社会変革などでハピネスを生み出すことができます。
実際、僕は「第4の波」はハピネスだと勝手に思っています。人類はこれまで、さまざまな価値を作り出してきました。農業社会、工業社会、情報化社会。次の波は何でしょうか? 僕はハピネスこそが新しい産業を生み出すと思っています。というより、もうそれくらいしか先進国では売るモノがないんです。
ハピネスをビジネスにした例にスターバックスがあります。スターバックス以前、喫茶店はコーヒーを飲んでタバコを吸う場所でした。しかしスターバックスは全店禁煙です。なぜ人はタバコが吸えない喫茶店で高いコーヒーを飲むのでしょうか。それは創業者がイタリアのバール文化をアメリカに持ち込みたかったからだそうです。自宅と会社の中間にある、家族的な一体感が得られる、ほっとする空間をお客様に提供したかったのです。タバコくさい居間ではくつろげないですからね。
ここまでいかずとも、ちょっとしたアイディアや仕掛けで社会は大きく変わります。たとえば地下鉄のサインシステムがあります。昔は地下鉄路の路線図は色マークだけでしたが、都心のターミナル駅では似たような色のマークが多く、都内に務めている方でも、けっこう迷いました。それで数年前から記号もつくようになりました。これで駅の滞留時間が減少したそうです。記号をつけるだけでハピネスを生み出した好例です。
さて、我々IGDA日本です。我々はゲーム開発者「個人」を対象とした団体で、セミナーなどを通してコミュニティを形成し、業界に貢献することを目的としています。本部はアメリカで、1995年にスタートしました。日本支部は2002年に今の形態でスタートし、来年度にむけてNPO法人化を目指しています。
活動は全てボランティアです。義務感ではなくて、楽しさがベースとなっています。そこには企業の枠を越えて、より大きな存在の一因として活動することで、他人に喜ばれている実感があります。つまりハピネスを生み出すことで自分たちが幸福感を感じているのです。
年間20回程度のセミナーやイベントを開催していますが、学生向けのものでは▽福島ゲームジャム▽CEDECスカラーシップ▽学生ゲーム勉強会ーーなどがああります。福島ゲームジャムは東京のプロのゲームクリエイターと、南相馬市の人が30時間程度でゲームを作るというものです。昨年の夏にユビキタスエンタテインメントと共同で実施しました。今年も夏に行う予定です。
余談ですがゲームジャムはコンテストではありません。初対面の人同士が共同でプロジェクトを完成させることを通して達成感や連帯感を感じてもらい、人間力を養うことを目的としています。つまり、これもハピネスの生成を目的に設計されているのです。
igda日本に興味を持ってもらったら、ぜひイベントやセミナーに参加してみてください。そして機会があれば、そこから運営側に回ってもらえればと思います。この時によく言っているのですが、100%の仕事を90%の時間で片付けて、残り10%でハピネスを生み出すようにしていくと、良いと思います。コミュニティ活動も、その一つです。
まとめます。次の産業はハピネスが主役になっていくと思います。いろいろな分野でハピネスを生み出せる人になりましょう。そのためにはigda日本のようなコミュニティ活動に参加するのも一案です。
というわけで、みんなでハピネス社会を創造していきましょう。ありがとうございました。
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2011-12-28 2:56 |
代表の交替とNPOの意味について
長らくNPO化についてだらだらと書いてきましたが、時々こんな風に言われることがあります。
「帳簿処理や規約に基づいた運用って、別にNPOじゃなくても良いんじゃないの?」 はい、おっしゃるとおりですW 世の中には任意団体のまま、きっちり活動されている団体は星の数ほどあります。 しかしIGDA日本はその道を選びませんでした。なぜでしょう? とりあえず個人的な動機付けとして一番大きいのは、「ちゃんと代表が交替できる組織にしよう」という点です。ぶっちゃけ代表に就任するにあたって、僕は「辞める気」まんまんで引き受けました。 実はIGDA日本って、代表の任期や交替に関する規約が、まだないんです。というより規約そのものが整備中。というのも、前代表の新さんが最初にIGDA日本を立ち上げたとき、誰もこんなに長く続くと思ってなかったんですよ。僕が言うのもなんですが、たぶん当の新さんも同じ気持ちだったと思います。とりあえず迷う前に飛べと。かなり勢いに任せた部分があったのではないでしょうか。横から見ていた限りでは、そんな印象でした。 それが幸か不幸か、皆様の温かいご支援とお力添えに恵まれて、ここまで活動を続けられることができました。活動規模もどんどん大きくなって、今では平均すると年に1回以上、なんらかのセミヤーや活動が行えるまでになっています。正直、発足当初はゲーム開発者コミュニティ自体が日本では成立不可能と言われていたほどなので、浮き世の感があります。まさに、これは新さんの慧眼であり、並々ならぬ行動力の賜物だったと言えるでしょう。 ただ、それだけに代表個人に関する負担が年々大きくなっていったのも事実でした。それと共に、誰が新さんの後任になれるのか、という新しい問題が生まれてきたんですね。はっきり言って、誰がやっても無理だし、なんとなくみんなで牽制し合っている雰囲気もありました。そんな中でここ1年くらい、僕の方に話がふってくるんじゃないかなあ、という印象を受けていまして、やっぱりそうなった、というのが正直なところです。 いまちょっとメールを確認したら、5/23に新さんから代表交代に関するメールが僕のところに来てますね。正直ちょっと迷ったんですけど、結果的にその日のうちに受託しますとメールを返しています。その後でスカイプチャットで行っている運営ミーティングに話が上げられて、問題ないでしょうということになり、TGSが終わったあたりでリリースを出すことになって、現在に至るという流れです。客観的にみて、すごく適当な感じがしますけど、でもそれしかなかったんですね。だってルールがないんだからw というわけで僕も引き受けるに当たって、自分の中の条件として「気持ちよく次に引き継げるための仕組みを作ろう」と固く心に誓いましたw いや、だって大変なんですよ中途半端に大きくなった任意団体、それもIGDA日本みたいにボランティアベースの代表って。それで儲かるわけじゃないのに、責任だけはふってきますからね。一方でトップが変わらない組織は絶対駄目になっていくのも、また事実です。 これを避けるためには、トップの役割をみんなで分担して、もっと代表交替の敷居を下げる。ひらたくいうと、新さんじゃなくてもIGDA日本の代表が務まるようにする。そのためにはルール作りもさることながら、ルールとルールに基づいた運用が、外部からチェックされ続ける必要がある。そのためにはNPOみたいに法律に基づいた組織になるのが早い、というロジックです。 余談ですけど、僕とかあなたとか、人には人格がありますよね。企業などの法人はこれに対して法人格があります。つまり会社や組織を架空の「人格」に見立てる。これによって構成員が変わっても、架空の「法人」が存続し続ける。こんな風に組織と構成員を切り離すことによって、責任を分担できるんです。 これまでは代表=組織だったので、代表一人が組織の責任を負うシステムだったのが、みんなで分担して責任を負うシステムに変えていきましょうという訳です。だって代表一人が責任を負うなんて、怖くてやってられませんよ。もちろん「架空の存在に人格を与える」には、それ相応のめんどくさい手続きが必要なんですが(じゃないと乱立しちゃうので)、そこは粛々と頑張っていきましょうという形です。 というわけで、まるっとまとめると、NPOになって得をするのは誰だ? それは代表=僕だ! というお話でしたw ホントに、「辞める気まんまん」で引き受けましたので、ぜひとも皆さんのご協力をよろしくお願いします。 |
2011-12-26 1:28 |
運営ミーティングを行っています
IGDA日本事務局では11月から毎週木曜日の夜にスカイプミーティング、毎月最終土曜日の午後に公民館の会議室などを借りて、リアルミーティングを開催しています。テーマはIGDA日本の運営に関するさまざまなことで、中でも一番大きいテーマがNPOに関する準備(定款や細則などの規定作り)です。議事録はGoogle DocmentとDropboxで共有され、事務局MLに参加しているメンバーなら、誰でも見られるようになっています。
このように定例ミーティングを開始してから、これまでわからなかったこと、見えなかったことが、よりクリアになってきました。僕自身もこれまで主に、SIGの共同世話人という立場でIGDA日本にかかわってきたため、活動も限定的でしたが、新しく代表として事務局の運営を推進していくにあたり、改めてわかったことがたくさんあります。 中でも代表的なものは、お金の流れです。これまでIGDA日本では主にSIG単位でセミナーを行い、事務局の活動は限定的でした。これにはゲーム開発者の多くが首都圏に集結しており、IGDA日本の活動が活発になるにつれて、自然と専門的な分野に分かれていったという経緯があります(海外では逆で都市ごとにゲーム開発クラスターがあり、そこのコミュニティとしてIGDAの支部が発足する一方で、専門分野の関心事を共有する人々がSIGとしてまとまり、支部を越えたコミュニティを形成する流れが見られます)。セミナーなどの収支も単独、またはSIG単位で黒字になれば良く、会計や運用も原則としてSIGの世話人にゆだねられてきました。 しかし、NPO化するためには、IGDA日本の収支を一元化し、帳簿に記載して決算を出し、公開しなければなりません。そのため現在、SIGで管理しているお金を集約すると共に、3月末の決算に向けて整理を行っています。その一環として2011年度に開催したSIGセミナーの決算表を、12月のリアルミーティングで精査したのですが、黒字のものもあり、赤字のものもあり、改めて活動内容を違った角度から振り返ることができました。 なお、NPO化の準備に伴い、 今後はSIG単独の予算という概念はなくなり、経費関係はSIGの世話人が一時立て替えて、後に事務局から振込精算する形になります。こうすることで、単独では赤字が予測されるセミナーでも、開催意義が高いものであれば、事務局決済で開催可能になります。交通費や謝礼など、これまで曖昧だった経費の支出についても、現在規約を整備中です。手間が増えるのは確かなのですが、こうしたルール作りを進めることで、より質の高い活動ができると考えています。 こんなふうに、活動の環境を整備することで、より大きなチャレンジを継続的に行っていこうというのが、NPO化の大きな理由です。まずお金の流れを明確にして、次にセミナー開催などのフローを策定し、活動計画を立てて年間予算を決め、という風にミーティングを進めています。いわば、より高くジャンプをするために一度、身をかがめて力を蓄えている状況なのですが、では具体的に来期は何をするのか。 NPO化の申請は大きな目標の一つですが、それ以外のアクションについては、改めてご報告できるかと思います。 |
2011-12-17 0:40 |
SIG-INDIEが開催されました
SIG-INDIE MMD for Unityが12月5日に開催されました。当日は50名弱の方々にご参加いただき、大変ありがとうございました。準備と運営を取り仕切った神奈川工科大の竹渕君、たいへんお疲れ様でした。また会場を無償でご提供いただいた、CRIミドルウェア様には改めて御礼を申し上げます。僕もUstream配信で参加しました。回線トラブルで断線が続き、たいへんご迷惑をおかけしました。ニコニコ動画さんが同時配信されていたので助かりました(僕はWi-MAX、ニコ動さんはイーモバイルで配信されており、こちらは回線トラブルが軽微だったようです)。
さて、前回までいろいろとNPO化について私論を書いてきましたが、そもそもどうしてみんな、こうした活動を行っているのでしょうか? IGDA日本だけでなく、全世界のIGDAの活動は基本的に会員のボランティアワークでまかなわれています(本部でも常勤スタッフは3名程度しかいません)。おそらく、答えは人によって異なると思います。そこでとりあえず僕の場合を説明しましょう。答えはシンプルで「楽しいから」です。多かれ少なかれ、他の人々も同じような感覚を抱いているんじゃないかな。だって義務感や使命感では、こんなに長く続かないですよ。活動をしていて楽しいから、ずっと続いているんです。 たとえば僕はそれまで、SIG-GLOCALIZATIONの共同世話人として、主にSIGの活動を中心にIGDAに関わってきました。そのため他のSIGのセミナーには、あまり顔を出していなかったのですが、昨年秋からUstream配信チームの一員として、ほぼすべてのセミナーに顔を出すようになりました。そこでいろいろな人とコミュニケーションを取ったり、それまで知らなかった知識に触れたり、そしてなにより会社や仕事の枠を越えた、IGDAという、より大きな組織の一員として活動することで、さらに大きな楽しさを感じるようになりました。しかも活動を通して「信頼感」という、目に見えない価値を得ているという実感があります。 もちろん、IGDAの活動にかまけて、本業がおろそかになるようでは、本末転倒ですよね。もちろん僕も主夫時々ゲームジャーナリストの合間の時間で活動しているので、ご心配なく。やっぱり一日は24時間しかなくて、一人で行える作業量には限りがありますから。ただ、よく最近言っているんですが、いつもの仕事を9割の時間で片付けて、残りの1割をコミュニティのために費やさなければ、いろんな意味で、そのうちご飯が食べられなくなっちゃうんじゃないかなあ・・・。 まあ、僕がフリーランスだからそう感じるのかもしれませんが、これから日本経済はどんどんアメリカライクになっていき、会社という疑似共同体は解体されていく。そこで会社間をつなぐ、IGDA日本のようなコミュニティの存在は、さらに大きくなっていく印象を受けます。皆さんはどのように感じられるでしょうか? では! |
2011-12-7 13:46 |
NPO化に関する個人的なスタンス
小野です。前回はIGDA日本として、全体的なNPO化に関する考えやスタンスを説明しましたので、今回は個人的な考えについて、簡単に説明させていただきます。なお、この内容は全て僕個人の考えであることはお断りしておきます。また、IGDA日本に関わっていただいているすべての人に、それぞれの考えがあることと思います。いろいろコメントなどいただければ幸いです。
さて、僕はゲームというものを、大きな意味で「インターフェース」だと捉えています。インターフェースといっても、入力デバイスやGUIなどの話ではなく、ホントに大きな意味での「接点」というイメージです。 これまでゲームの開発技術は、変な言い方になりますが「娯楽の一部」と結びつくことで、テレビゲームとして成立してきました。しかし今ではそれが結びつく領域がどんどん拡大していて、シリアスゲームやゲーミフィケーションといった、新しい領域を生み出してきました。ARGなどもその一つですし、今後は映画産業などと、さらに密接に結びついていくことでしょう。 つまり、ゲームの開発技術やノウハウが、一方では古典的な「ゲーム」というエンターテインメントして存在し、もう一方では娯楽以外の様々な産業や領域と結びついて、さらに拡散していくというイメージです。そしてそのうち、シリアスゲームやゲーミフィケーション、ひいてはゲームという言葉すらも意味を失っていき、日常の生活全てが「ゲーム」と呼ばれる時代が遠からずやってくることと思います。 こんな風にゲームが何かと融合し、文字通り私たちと社会を結ぶ「インターフェース」になる。2000年くらいから、そんな風な漠然としたビジョンを抱くようになりました。ゲームUIのノウハウを実領域に応用する「ゲームニクス」などのビジョンに共感するのも、こうした理由からです。 でもって、こんな風にゲームがゲーム以外の領域と切り結び、融合して、新しい化学変化を起こすようになるためには、ゲーム開発やゲーム開発者のコミュニティもまた、他の産業や学術(=学会など)のコミュニティと、きっちり膝づめで話が出来るように、公的性や社会性を持つ必要がある。そんな風に、ここ数年で考えるようになりました。 もちろん、産業としてのまとまりであったり、受け皿としては、CESA(一般社団法人コンピュータエンターテイメント協会)がありますし、CEDECやTGSがその一翼を担っています。しかし、それよりももっと現場寄りだったり、開発者個人を対象としたコミュニティであったり、より小規模で小回りのきく受け皿があってもいいなあと思うわけです。そして、まさにこれがIGDAがこれまで担ってきた役割で、これからも変わらない部分だと思っています。 まとめると、ゲームが娯楽の一分野という狭い殻の中に収まりきらなくなりつつある今、IGDAもまた、より大きな世界と肩を並べていくうえで、より社会的な存在になる必要がある・・・。そんなイメージです。うまく意図がご理解いただけたなら幸いです。 |
2011-12-5 13:52 |
ブログを始めました
IGDA日本代表の小野憲史です。思い立って新しいブログを始めることにしました。
すでに代表信任の挨拶でも述べたとおり、現在IGDA日本はNPO法人化に向けて準備を進めています。そこで本ブログでは、その進捗状況などについて紹介しつつ、より多くの方々にIGDA日本の取り組みについて知っていただき、活動のご協力を賜れればと思っています。 現在IGDA日本では毎週1回の定例ミーティングを行っています。ミーティングはスカイプチャットとオフラインミーティングの2種類があり、スカイプチャットは毎週木曜日の午後10時から1時間、オフラインミーティングは毎月最終土曜日の夕方4時から2時間程度です。 もっとも、なぜNPO法人化が必要なのか、ほとんどの方にとって、あまりピンと来ないのが正直なところだと思います。そこで、はじめに運営メンバーがどのような問題意識を抱いているのかについて、簡単にご説明しましょう。 IGDAは米カルフォルニア州にて登録が行われている国際NPOですが、IGDA日本は任意団体として活動をしています。任意団体というのは、ひらたくいえば趣味のサークル活動などと同じ、私的な集まりという意味です。余談ですが、世界各地のほとんどの支部は、IGDA日本と同じ任意団体です。 もっとも活動が小規模のうちは、任意団体の方が小回りがきいて良いんですよね。これが年数が経って、専門部会(SIG)が発足したり、秋葉原ロケテショウや福島ゲームジャムなどのイベントを行ったりと、だんだん活動が大きくなるにつれて、さまざまな問題が顕在化してきました。 ここでまるっと整理してしまうと、団体の活動がある程度以上になると、どうしても世の中の仕組み、ひらたくいえば「法律」と向き合う必要が出てくるんです。たとえばイベントで事故が発生した、SIGのセミナーで著作権侵害が発生した。こんな時に任意団体のままでは、責任の所在が不明瞭になってしまいます。 そこで「法人格」という、もう一つの人格を作ることで、こうした問題にも、しっかり対応していきましょう、ということなんですね。これは裏を返せば、IGDA日本が、これからますます活動をアクティブにしていくという宣言でもあります(でなければ法人格を持つメリットはありませんからね)。 もっとも法人格を取得するのは、それなりにやっかいです。定款や税務関係の書類を作ったり、法人登記をしたり、いろいろ面倒なことが待ち構えています。税理士や司法書士・行政書士の方々に相談に上がったりもしています。もっとサクッとNPOにできるかも、なんて甘いことも考えていたりしたのですが、そうは問屋が卸しませんでしたね。 とはいえ、言っちゃったからには、粛々と進めていくしかない。というわけで現在は組織固めを進める毎日です。より高くジャンプするためには、一回足を縮めて力を蓄える必要があるという感じでしょうか。皆さんの中で、こうした活動に協力したいという方がいたら、ぜひご連絡いただければと思います。ではでは! |